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「スラッシュメタル四天王」について(改題1改稿2) [ロック]

ロックの趣味も多様化しているので、ラウドロックとか、スラッシュ・メタルといわれた音楽を聞ける人と、聞けない人に分かれているのが現状です。

『Thrash』とは「ムチ打つ」という意味で、HR/HM(ハードロック・ヘヴィメタル)をさらに過激にした音楽です。ギターリフに重きを置き、スピード感を重視した早弾きで聞かせるロックです。

聞けない人が多いと思いますが、料理で言えば、辛いカレーとか、辛い柿の種のようなものです。我慢すれば食べられるし、聞く事ができるのです。

スラッシュそのものは1980年初頭に出現しました。もはや時間がたって、今日では古典となっています。

頭に用意しているYouTube画像は、メガデスというバンドのリーダーであるデイヴ・ムステインが、戦車を乗っ取って暴走し、殺されるというミニ映画です。笑えるので、これだけでも見ていただければと思います。事件そのものは実際に起きて、なかなか凄い破壊力です。その本物の画像に、デイヴ・ムステインの画像を合わせてフィクションに仕立てられています。

メガデス     デイヴ・ムステイン

しかしスラッシュ・メタルという音楽でも、実はいろいろあって、このメガデスは、インテレクチャルス・ラッシュを標榜しています。つまり知的であろうとしているのです。

音楽的には、非常に複雑でテクニカルなギターリフ、演奏のむずかしい曲展開をなしとげる技術の高さを特徴としています。歌詞もまた政治性の強いもので核戦争や政府の陰謀、表現の自由などを歌います。そういうわけで音楽性を豊かに展開したバンドでした。

メンバー・チェンジが激しいバンドで、事実上はムステインのワンマンバンドですが、ジャズなどのうまい演奏家を次々に導入して、非常に良い音楽を発信し続けたのです。

つまり彦坂尚嘉の《現実判定法》では、実はメガデスの音楽には《原-大衆音楽》というものがなくて、《大衆音楽》ではないと判断されるのです。

大衆音楽というのは、リズムやメロディーの直接的なストレートな官能性で成立している音楽です。メガデスの音楽は、知的で複雑なリズムやリフ、間接性をもったメロディやヴォカルで、ストレートな大衆芸術とは違うズレを持っているのです。

YouTube画像で見ると、ものすごい数の観客を集めた演奏になっています。これだけの人を集めているので、大衆音楽であると考えられるものです。これだけの観客を集めていて、大衆音楽ではないというのは、矛盾であって、説得力のある論理には聞こえないでしょう。

しかし4大スラッシュバンドというものがありますが、その中で、同じスラッシュでも、唯一《原-芸術》性のあるバンドなのです。

つまりメガデスは、彦坂尚嘉の《現実判定法》では、芸術音楽であるということになります。つまり、一聴すると刺激が強いので大衆音楽と間違えるのですが、じつはそれが複雑である事で間接化されているのです。

こういう音楽に《芸術》性があるということを認めたくない人が大半以上だとは思いますが、しかし彦坂尚嘉の《現実判定法》での判断は、このメガデスに《原-芸術》《芸術》《反芸術》《非芸術》《無芸術》《形骸・炎上・崩壊》の芸術概念の梯子があると考えています。

聞きにくい音楽だとは思いますが、それは《象徴界》の芸術音楽だからです。我慢出来る人であれば、次の一曲も聞いてみてください。

その後に、大衆音楽のメタリカを取り上げています。メタリカは《想像界》の聞きやすい大衆音楽のスラッシュバンドです。ですので、その前にメガデスの《象徴界》の《芸術音楽》?を聞いて、聞き比べてください。

メガデス 《象徴界》の《芸術》音楽

同じスラッシュ・メタルでも、《想像界》の音楽で、大衆音楽なのが、メタリカです。

もちろん大衆音楽ですから人気を集めていて、多くの人に好かれています。子供にも好かれるバンドです。私の子供が3歳のときに聞かせたら、キャッキャと言いながら踊りました。そういう音楽が大衆音楽なのです。

リフは単純で、曲も分かりやすく、演奏も荒っぽいものです。メガデスの演奏の精緻さは、メタリカにはありません。しかしだからこそ大衆に分かるものであり、愛されるものなのです。シングルとアルバム総売り上げは1億枚を超え、1990年代の全米アルバム総売り上げ4位のビッグ・バンドです。

メタリカ 《想像界》の大衆音楽



同じスラッシュ・メタルでも、《反芸術》というか、《反音楽》のスラッシュバンドが、スレイヤーです。《反芸術》ですから、もっと聞きにくいです。精神異常、死体、自殺、戦争などの歌詞が過激で、訴訟や発売禁止を繰り返してきています。このスレイヤーの音楽は大衆音楽で、しかも《現実界》の音楽です。

ここで彦坂尚嘉が《現実界》というと、また批判が起きるかもしれません。しかし私を批判しているのは、ラカンの専門家ではなくて、ラカンの本も読んでいない素人なのです。

私がラカンを読み始めたきっかけは、日本ラカン協会の初代理事長の佐々木孝次さんです。佐々木氏がラカンの精神分析をフランスで受けて、パリで自己分析の過程を描いた『心の探究』を出版して、それを読んだことです。

実はその前に佐々木氏は『母親・父親・掟 ・・・精神分析による理解』をせりか書房から1979年に出版しています。私自身は父親のいない私生児として生まれて苦しんでいたので、この『母親・父親・掟 ・・・精神分析による理解』という本は、大きな影響を受けます。

次いで2冊本のラカンの主著『エクリ』を買って読んでいます。つまり私は1979年からラカン関係の本を読んで32年を経ているのです。その32年の過程では、現在の2代目の日本ラカン協会の理事長の若森 栄樹氏の著作『精神分析の空間』弘文堂 1988からも大きな影響を受けています。

彦坂尚嘉自身は日本ラカン協会の幹事をしていて、先日も大会開催のお手伝いをしています。日本ラカン協会しのものは、文献学的な傾向が強くて、フランス語でラカンを読む事が基本的なものです。

理事長の若森 栄樹氏とお話もしています。東京大学の助教授の原和之准教授は日本ラカン教会の事務局長をやられていますが、今回もお話をしています。原氏はラカンの文献研究者としてはすぐれている方です。あるいは福田 肇(フランス・レンヌ第一大学)さんと伊藤啓輔(専修大学)さんのラカンをフランス語で読む読書会にも出席しています。ここには哲学者の中島義道氏も協力なさっていらっしゃって、お話もしています。

自分でもラカンの読書会を主催して40回になっています。

こういう努力をしている私を、ラカンを1冊も買ってもいないし読んでもいない人が、32年も読んでいる彦坂尚嘉のラカン用語の使い方はトンでもないものだと批判するのです。

それはまずラカンの思想の過激さを読んでいない事によります。

その上に、私が、ラカンの思想と用語を、《現実判定法》を使って現実の測定に展開しているからです。ラカンそのものは臨床医ではありますが、科学者である以上に哲学者であって、思想的な展開力が強くて、必ずしも事実を測定しているとは言えない所があるからです。一方の私は、《言語判定法》で現実を測定している観察者なのです。ラカンを読んだ上で《現実界》という言葉を、現実のある特定のものに投げかけてみると、ラカンの定義とは別のものの反応が起きるのです。彦坂尚嘉が測定しているのは、そうしたやり方です。

さて、そういう訳で、《言語判定法》で、《現実界》というラカンの用語を音楽に投げかけて、その反応を取ると,スレイヤーの音楽は《現実界》の音楽なのです。まずは、聞いていただきたいと思います。聞いてもらうと、《現実界》であるというは納得いく面があるはずなのです。

 
スレイヤー 《現実界》の大衆芸術

スラッシュ4天皇の最後のバンドがアンスラックスです。このバンドは、ライブで見ないと、本当の良さは分かりませんが、大衆バンドではありますが、観客とのコミュニケーションの質が、非常にレベルの高いバンドなのです。彦坂尚嘉の《言語判定法》では、《サントーム》のバンドであると出ます。

つまり メガデス・・・・・・・《象徴界》の音楽
    メタリカ・・・・・・・《想像界》の音楽
    スレイヤー・・・・・・《現実界》の音楽
    アンスラックス・・・・《サントーム》の音楽

という風に、スラッシュというのは、4界に棲み分けをしているのでした。

アンスラックス 《サントーム》の大衆芸術

スラッシュの4天皇と言われるバンドが、実は《象徴界》《想像界》《現実界》《サントーム》と、ラカンの4つの精神世界に分裂してすみ分けていると見えるのです。このことは、しかしスラッシュの4バンドを聞いてきていないと分からないし、理解出来ないでしょう。ともあれ、こうしてラカンの《象徴界》《想像界》《現実界》《サントーム》という4区分は、今日では一つの構造として出現してきているように思います。

さて、後は《芸術》であるメガデスのライブをお楽しみください。















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コメント 3

eggflower

僕の耳にはMegadethが一番聴きやすいですね。
Megadethの演奏は非常に再現性が高く、クラシカルなバンドだと思います。
by eggflower (2011-01-17 17:24) 

ヒコ

eggflower様
コメントありがとうございます。同感です。メガデスは、きわめて正当に音楽をやっていて、クラシックなバンドです。面白い事ですが、入れ墨をしていません。本人も、入れ墨はしていないし、まじめに音楽を追究しているという日本語の手書きにメッセージを出していた記憶があります。
by ヒコ (2011-01-17 17:42) 

negaDEATH

メガデスは確かに僕の仲間内でも人気が無かったですね。メタリカの方がノリやメッセージが単純で演りやすかったし、スレイヤーも若い頃の自分らの鬱積した欲求制圧をカタルシス出来ました。

「メガデス何かはどう?」と当時組んでいたバンドの友人に聞くと、「あれは古い音楽だから面白く無いよ」という反応でしたので、まさにクラシックなバンドでしたね(笑)


by negaDEATH (2011-01-17 20:36) 

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