SSブログ

400次元と「今泉旋風」 [アートの格付け]

『アートの格付け』や「芸術分析」を追いかけてきたのは、それは自分自身の作品のコントロールのためでありました。制作というのは非常にむずかしいものであって、制作を重ねるとどうしてもクオリティが落ちてきてしまうからです。歳をとるにしたがって、作品のクオリティを上げて行ける作家は、ごく少数しかいませんでした。だからこそ晩年まで自分のアートの格を上げ続けて行ける少数の偉大なアーティストは貴重でり、目標たりえたのです。

 

ピカソですらが、キュビズムの《超次元 名品領域》から、一番抽象化した分析的キュビズムの次期に《第16次元 崩壊領域》に落ち、さらに総合的キュビズムでは《第6次元 自然領域》になってしまう。第2次世界大戦後は《第8次元 信仰領域》に転落して、低い絵画に終始して死んでしまったのです。

 

こうした転落の傾向は、実は現代美術につきまとうところがあって、デビュッフェでも晩年は低下し、ロスコーに至っては作品は退化して自殺して行きます。こういう例は実は多くて、20世紀美術の大きな問題なのです。何故にそのような事が起きるのか? それは急速に時代が変化し、時代の次元が増大して行くために、その変化にアーティストが対応できず、相対的に古くなって行ってしまうからです。

 

第2次世界大戦後の、いわゆる戦後美術の中で,この大きな変貌が起きたのは第2次世界大戦後で、この最初の指摘が、いわゆる「今泉旋風」です。これについては私も書いてはいるのですが、光田由里さんのより詳細な研究があって、これについて前田恭二氏が次のようにネットで紹介しているので、引用しておきます。

 

1952年渡欧した今泉篤男は国際舞台で見る日本人画家の絵の弱さに打ちのめされ、それを同誌などで率直に吐露した。具体的には多くの洋画家・版画家が出品したサロン・ド・メエ、日本が初参加したベネチア・ビエンナーレであり、当の出品作家からの反響も同誌に掲載された。この議論は今泉と出品作家側の重鎮である梅原龍三郎の対談でハイライトを迎える。今泉は対談の最後で、日本の美術の近代化に向けて、提言をしているという。本稿から孫引きすると、以下の通り。<一つは、現在の日本の美術団体を一応解消するか、再編成するかどっちかにしてもらう。もう一つは、現在の日展をやめてしまうか、文部省の手から名実ともに切り離す。そして、国家は、クワドリエンナーレでもビエンナーレでもいいけれども、相当の経費を投じて各国の画家の作品を招待して、日本でちゃんとした国際展をやる。この二つのことに切りかえて行かなければ、日本の本当の近代絵画は築かれにくいと思う。それで私はまず先生にその気になっていただきたいと思うのです>。という提案の通りに、まったく現実は進行しなかったわけで、その延長線上に今日の国立新美術館なども位置しているわけである。忘れられてはいけないことに、きちんと目を向けている筆者に敬意を表したい。

情報出典:http://www.pg-web.net/off_the_gallery/papery/2007/Feb_2007.html

 

私自身は、この今泉旋風についても1971年段階で再評価していて、その後『戦後美術批評の確立』(『彦坂尚嘉のエクリチュール』所収)に書いていますが、同じ思いは日本の現代美術や現代アートの《第6次元 自然領域》主義として批判し続けてきたのです。

 

つまり日本の現代美術/現代アートの多くが《第6次元 自然領域》か《第8次元 信仰領域》に停滞していることを良しとする低いものしかないために、おもしろくないのです。

 

しかも《第6次元 自然領域》や《第8次元 信仰領域》の作家の作品は、歳を経ると次第に古くなって生気に欠けて、劣化して行くのです。こういう事態から、どのようにして彦坂尚嘉は脱出できるのか?

 

『アートの格付け』や「芸術分析」を探求する彦坂尚嘉の姿勢を、多くのアーティストたちは嫌らって、去ったり、離反していったのです。同様の事は画廊との関係にも起きました。最近になってようやく少数ですが、私の主張のおもしろさを評価してくれる若いアーティストに出会うようになってきました。それが気体分子200というグループになったのです。メンバーは栃原比比奈、中川晋介、そして彦坂尚嘉の3人と、田嶋奈保子です。この「気体分子200」というグループ名は、さらに「KB400」に変貌してきています。将来的には「KB800」になることも視野にいれているのです。

 

というわけで、今回の彦坂尚嘉のドローイングは、『アートの格付け』が400までになった作品です。400次元とは何か? については、説明に時間がかかるので、別の機会にゆずりますが、内容的にはおもしろくなっていると自分では思います。どうせ日本の中では無視されるでしょうが、私も余命が無いので、少しでも制作に励んで、自分の満足のいく作品を晩年に一男多く制作できればと思います。



nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。